今のコーヒーの流れ(流行)は、サードウェーブと言われています。
厳密にはサードウェーブからフォースウェーブへの移行期くらいにあたるでしょうか?
ところでサードウェーブというくらいなら、今までファーストウェーブやセカンドウェーブという流行も当然あったわけですよね。
今回はその中でコーヒーのファーストウェーブがどういうモノだったのか?について記事を書いていきます。
目次
ファーストウェーブとは?
ファーストウェーブの発信地
まず、ファーストウェーブ(第一の波)ですが、アメリカにて19世紀から20世紀初頭に起きたコーヒーの波と言われています。
一言でどういうものだったかと言えば、コーヒーの大量生産と大量消費です。
それ以前にもコーヒーはアメリカで飲まれてはいましたが、決して簡単に飲めるものではありませんでした。
それには、コーヒーの保存という点がキーワードとなってきます。
コーヒーはもちろん豆の鮮度が重要になってきますが、当時はまだ長期保存が難しくコーヒーは収穫された現地で飲まれるのがごく普通の事でした。
コーヒーの産地と言えば、アメリカから遠く離れた中南米やアフリカ・東南アジア等の地球上でいえば南半球にある国がほとんどです。
そんなコーヒー産地からは、現在のように流通経路が整ってるわけでもなく、輸送にも長い時間が掛かったために、アメリカで手軽にコーヒーを味わうのは難しい事だったのです。
しかし、当時生まれたいくつかの技術がコーヒーをより身近な飲み物へと変えていきます。
インスタントコーヒーの発明
そんな中、一石を投じることとなるのがインスタントコーヒーの発明です。
ご存知の方もいると思いますが、このインスタントコーヒーの最初の発明は日本人科学者によるものです!
その日本人とは加藤サルトリという方なのですが…
ちょっと引っ掛かりますよね。
なぜ、この時代にカタカナなのか?
実はこの方はシカゴに留学していたときに加藤商会を設立します。
インスタントコーヒーを発明した場所は、日本ではなく、アメリカにいたときだったんです。
そして発明したインスタントコーヒーはニューヨークで開催された博覧会にて出品することになり、非常にアメリカとゆかりのある方だったと言えます。
1899年、加藤サルトリ氏の発明したインスタントコーヒーはスプレードライ製法といい、緑茶を粉末にする技術をコーヒーに応用したものになります。
ただ、最初の発明者としては加藤サルトリ氏なのですが、残念なことにこのインスタントコーヒーは特許を取っていませんでした。
また、発明したインスタントコーヒーはコーヒーに重要な風味に欠け、高い評価を受けるには至りませんでした。
こういったこともあり、正式な発明者としては、別の方法で発明したアメリカのジョージワシントン氏のインスタントコーヒーが特許を取って、世に知れ渡るようになります。
このジョージワシントンのものを商品化して大きな成功を収めたのが、今でも有名なスイスに本社を置くネスレになります。
ちなみに日本でのインスタントコーヒーの大量生産はこちらも有名な森永製菓になります。
お湯を注いで簡単に作れるインスタントコーヒーはもちろんヒット商品になりました。
このインスタントコーヒーの登場は、今まで難しかったコーヒーの長期保存という意味で一つの方法が生まれ、しかも手軽に淹れることができるのでコーヒーの大量消費へと繋がったのです。
真空パック技術の登場
インスタントコーヒー以外にもコーヒーの長期保存を可能にした技術が当時生まれます。
今ではごく当たり前になった真空パックです。
真空パックに入れて輸送することで、コーヒー生産地から遠いアメリカ本土まで新鮮なコーヒー豆を運ぶことができたんですね。
こちらの技術もコーヒーの大量消費に一躍買うことになります。
その頃の日本では・・・
1960年代まで続くコーヒーのファーストウェーブですが、その頃の日本はどうだったのでしょうか?
日本のコーヒーの飲み方はハンドドリップが主流で、一杯ずつ淹れるスタイルは今のサードウェーブの流れに通じるところがありますが、日本ではすでにこの頃の定番の飲み方です。
そして喫茶店の文化が生まれます。
今では、カフェ等の形態に押されて数を大幅に減らしていますがレギュラーコーヒーを提供する喫茶店は、まだコーヒーが家庭的な飲み物でなかった時代に重要な憩いの場となりました。
最近は、原点回帰でこういった喫茶店も再注目されるようになっています。
缶コーヒーの発売
ファーストウェーブとセカンドウェーブのはざまに生まれたのが、缶コーヒーです。
こちらの缶コーヒーも日本生まれの飲み物で、当時から日本人がコーヒーを好んでた証でもあるでしょう。
初めて缶コーヒーを発売したのはUCC上島珈琲からのものです。
UCCの缶コーヒーはもはやパイオニアであり、今日でも缶コーヒーと言えば真っ先に思い浮かぶシリーズの一つではないでしょうか?
この頃の日本では、コーヒーと言えば喫茶店で飲むレギュラーコーヒーが一般的で過程で飲まれることはほとんどありませんでした。
初めての缶コーヒーは今でも現役の茶・白・赤のラベルが特徴のミルク入り缶コーヒーです。
発売当初は、難しい船出となりましたが、後の日本万国博覧会を通じて浸透し今に至る
定番コーヒー商品となります。
質より量のコーヒーへ
インスタントコーヒーや缶コーヒーの登場は、コーヒーを身近なものにするだけでなく、大量生産と消費へと繋がりました。
しかし、それによって失うものもあります。
それが、コーヒーの品質の低下です。
やはり鮮度の面では、これらのコーヒーの飲み方では味の点で落ちます。
確かにこれらのコーヒーは安く流通されますが、そのままコーヒーの価値を下げることとにもなったんです。
いわばファーストウェーブは「質より量の時代」だったんですね。
当時のコーヒー農園主達は安く取引されるコーヒーに生計が難しくなり、廃業になった農園も多く出たそうです。
現在でもそうですが、コーヒー生産国は発展途上国に多い傾向があります。
コーヒーはその国の経済に関わる重要な作物であり、外貨獲得の手段にもなっています。
コーヒーの価値の低下は、当時のコーヒー生産国の経済にも大きく影響したものと思われます。
まとめ
今のサードウェーブのコーヒーのように、ファーストウェーブ期は美味しいコーヒーを飲みたい・飲めるという環境ではなかったと言えます。
良くも悪くも良いコーヒーを知らない時代であり、今よりコーヒーはもっとジャンクな飲み物だったと言えますね。
ともすればコーヒーは当時体に良いものでは決してなかったはずです。
しかし今でも続くコーヒーの飲み方の原型が、このファーストウェーブの時代に出来上がったとも取れます。
家庭用のドリップマシンの原型が生まれたのも、このファーストウェーブ期です。
このファーストウェーブがなければ、セカンドウェーブやサードウェーブがなかったのは言うまでもありません。
当時のコーヒーをもっと身近に家庭的なものにしたいという気持ちが、ファーストウェーブに繋がったんですね。
今回もご覧いただき有難うございました。